人口300人の島

何度も何度もお礼を言って、さらに、近々スティーブさんを連れて再訪することを約束して、茂子さんの家を後にする。

スティーブさんによくにた、優しいまなざしを持った茂子さん。彼女が元気なうちに、できるだけ早く、戻ってきたい。私も太郎もそう心に決めた。

 

敦子さんをお寺に送った後、海沿いの道で島を一周してみることにした。

人口300人ほどの小さな島は、人口の集中しているお寺のまわり以外は、ほとんどが畑か森だった。道沿いにも柑橘系の木がびっしり立っており、その向こうに海が見えている。それぞれの木が、大きなオレンジ色の実をたわわにつけていた。何箇所かでは収穫作業の真っ最中だったが、野良の木もそこら中に生えていた。収穫する人のいない実が大量に落ちて、地面をオレンジ色に染めていた。

 

そのうち山の中で道は行き止まってしまい、狭いスペースで切り返し、もときた道を戻る。

ほぼ一本道ですれ違う人も車もほとんどないが、それでも時々すれ違うおばさんたちは、意外なほどにこやかな笑顔を向けてくれる。たぶんこちらが島外の人間だと言うことはわかっているのだろうが、瀬戸内海の温暖な気候のもたらせるものなのだろうか。ほっこりした気分になる。